NAGASPOビジョン2050 

――私たちのまちに豊かなスポーツ文化を!――


<はじめに>


We have a dream.
我々には大きな夢があります。それは1975年頃、学生の時に見た、とある本の写真から始まります。老夫婦と思しき二人が、蔦の絡まるベランダのカフェテラスで、ビールを飲みながら談笑しています。二人の視線の先には、テニスコートで練習をしている子どもたちの姿があります。おそらく、その中に自分たちの孫がいるのでしょう。他にも4面の芝生グラウンド、アリーナ、プール等の施設を紹介する写真があり、クラブハウスにはバーまでありました。

本には、ドイツのスポーツクラブであることが紹介され、『ドイツでは、ゴールデンプランというスポーツ振興施策によって、全国にこのようなスポーツクラブがあり、多くの市民が学校や仕事帰り、そして休日に、家族でスポーツを楽しんでいる』という説明がありました。
何という素晴らしいスポーツ環境、何という豊かな生活。日本との違いに愕然としながらも、いつか日本もこうありたいものだ、いつか自分のまちにこのようなスポーツクラブをつくりたいものだ、と夢をみていたのです。

あれから30年。私の夢が我々の夢になり、2004(平成16)年6月、河内長野市に長野総合スポーツクラブ(通称:ナガスポ)が誕生しました。設立されてわずか5年ですが、会員数が900名を超えるなど、その急激な発展や充実したプログラム等において、全国から注目されるまでになりました。

しかし、まだ夢への一歩を踏み出したのに過ぎません。国土が狭く、スポーツへの理解が十分でない我が国では、ドイツのスポーツクラブのような施設を、地域ごとに整備するのは難しいことです。また、地域のスポーツシーンが、文化にまで醸成するにも長い時間が必要なので
す。とても遠い道のりですが、我々は、大阪府内有数の広い面積や豊かな自然が残る河内長野市なら、「夢のクラブ」「豊かなスポーツ文化の創造」を実現できる可能性があると考えています。大事なことは、決して夢をあきらめないこと、将来にわたってクラブを存続させながら努力を続けることです。

以上のようなことから、この度のNPO法人化を契機に、今後クラブが目指すべき方向や将来像を明らかにするため、本ビジョンを策定することとしました。このビジョンによって、会員・コーチ等のクラブ関係者の間で夢が共有化されるとともに、行政・企業・市民の皆様の理解が一層深まり、支援の輪が広がっていくことを期待しています。

そして、私が見届けることは叶わないかもしれませんが、西暦2050年には、ナガスポが夢のクラブに成長していることを願ってやみません。

我々の孫やその子どものため、そして未来の地域のために……。 

2009年6月14日

特定非営利活動法人 長野総合スポーツクラブ 




<スポーツの意義とクラブの目的>

 近年、我が国では科学技術の高度化、少子高齢化が急速に進展し、身体を動かす機会の減少や人間関係の希薄化等により、さまざまな社会問題が顕在化してきています。また、長寿社会の到来や自由時間の増加などにより、人々の人生観やライフスタイルも、かつての仕事中心型から生活重視型へと変わってきています。

このように、私たちを取り巻く環境が大きく変化する中、人々の心身や生活に大きな影響を与えるスポーツの意義や役割は、ますます大きく重要になってきていると言えるでしょう。

こうした中、2000(平成12)年9月、文部科学省は「スポーツ基本計画」を策定し、我が国のスポーツ行政の方向を示しました(2007年改正)。

本計画では、生涯スポーツ社会の実現に向けた施策として、「生涯スポーツ社会の実現のため、できる限り早期に、成人の週1回以上のスポーツ実施率が50%となることを目指す」と定めており、その実現のため必要不可欠な施策として、「2010(平成22)年度までに、全国の各市区町村に少なくとも1つは、総合型地域スポーツクラブを育成する(将来的には各中学校区程度に定着)」ことを目標として掲げたのです。

我々の考えるスポーツの意義は次の通りです。

●スポーツは、子どもの心身の健全な発達を促し、フェアプレーの精神を有するたくましい青年・大人へと成長させることができます。

●スポーツは、体力向上やストレスの発散、生活習慣病の予防など、心身にわたる健康増進に資するとともに、人々の生活に生きがいや潤いをもたらすことができます。

●スポーツは、性別、年齢等の違いを超えた人々の交流を促進し、地域への愛着や一体感を醸成するとともに、地域経済を活性化することができます。

●トップアスリートのひたむきな姿は、見る人々に勇気と感動を与え、生きる活力や愛国心を育てることができます。

我々の目的は、このようなスポーツが秘めている多様な力を生かし、地域社会の発展に貢献していくことであり、定款には、「この法人は、さまざまなスポーツ・レクリエーション活動等を通して地域に豊かなスポーツ文化の創造を図り、もって次代を担う子どもたちの健全育成や地域住民の健康増進、交流を促進し、あたたかく活力あふれるまちづくりに寄与することを目的とする」としています。

<豊かなスポーツ文化とは>

明治以来、スポーツが、学校体育や企業が中心となって普及・発展してきた我が国に比べ、冒頭で紹介したドイツでは、
9世紀初頭から地域のスポーツクラブを中心に発展してきました。規模、種目数等はさまざまですが、多くのクラブでは芝生のピッチ、アリーナ、クラブハウス等の施設が整い、子どもから高齢者までがそれぞれのスタイルでスポーツを楽しみ、クラブライフを満喫しています。これらのクラブでは、行政や地元企業のサポートを受けながら、会員自ら運営に参加するシステムが定着しており、国民の4人に1人がスポーツクラブに入っているなど、国中に文化としてのスポーツがしっかりと根付いているのです。


あなたは、芝生の上でプレーする安心感と心地よさを知っているでしょうか。スポーツでいっぱい汗をかいた後のシャワーの爽快感、その後に仲間と飲むビールのおいしさを知っているでしょうか。自分のまちのチームを、まち全体で応援する誇らしい一体感を知っているでしょうか?

小さな子どもから高齢者まで、障害のある人もない人も、一緒になってプレーを楽しむことができる暮らし。するスポーツだけでなく、見るスポーツ・聞くスポーツ・支えるスポーツまでもがあり、手を伸ばせば、そこにスポーツのある暮らし。そんな暮らしが親から子どもへ、子どもから孫へと引き継がれていく……。スポーツ文化は、「生涯スポーツ社会」の理念とほぼ同義語とも言えますが、豊かなスポーツ文化には、さらに快適さと歴史が加わり醸成されるものだと考えています。
ひと口に総合型地域スポーツクラブと言っても、その地域の背景にある人口、施設、風土、習慣、気質、きっかけ、指導者等の条件によって、百の地域があれば百通りのスポーツクラブがあると言っていいでしょう。その中で、ヨーロッパのモノマネではない、独自の日本スタイルのスポーツクラブを育て、河内長野に豊かなスポーツ文化の華を開かせる

それがナガスポの挑戦であり、ミッション(使命)だと考えています。

<ナガスポが目指す方向と目標>

1、誰もが誇りに思う百年クラブへ

   会員数において2,000人から5,000人程度(校区人口の20%、市人口の5%程度)。クラブがまちの財産として親から子ども、子どもから孫へと代々引き継がれて伝統(100年)となり、「私たちのまちにはナガスポがある」と誰からも愛され、誇りに思ってもらえるクラブ、そんなクラブを目指します。 

2、理想のスポーツ環境の実現

   バスケットコート2面がとれるフロア、柔剣道場、トレーニング室等がある体育館。25mプール、スタジオ、シャワー等のある屋内プール。レストラン、事務室、会議室、談話スペース等があるクラブハウス、簡易スタンドのある天然芝のサッカー場やテニスコート等々、こんな施設で誰もが快適にスポーツを楽しむことのできるクラブ、そんなクラブを目指します。

3、世界で活躍するアスリートの輩出

   どんな競技の世界チャンピオンやオリンピックの金メダリストでも、スポーツをするきっかけの多くは身近にそのスポーツがあったからです。ナガスポ出身の、世界で活躍するトップアスリートが生まれ、「私がこの競技を始めたのは家の近くにナガスポがあったからです」と言ってもらえる、そんなクラブを目指します。

4、シンボルチームの育成

   サッカーのJリーグ、バスケットのBJリーグ、野球の独立リーグなど、地方都市を拠点としたチームが増え、市民あげてサポーターとなって応援するシーンが数多く見られるようになってきました。ナガスポのチームが育ち、このようなリーグに参戦して、スタジアムにクラブをあげて応援に行く、そんなクラブを目指します。

我々の力だけでは、とても実現できそうにない高い目標ですが、力を蓄え、西暦2050年の実現を目指してクラブづくりを進めていきます。あなたも、こんな夢のクラブづくりに参加しませんか。